徳島県立阿波十郎兵衛屋敷(徳島市川内町)で現在、丹生谷(にゅうだに)の阿波人形浄瑠璃を紹介する特別展が開催されている。
同展では、徳島県を流れる那賀川の上・中流域の丹生谷と呼ばれる地域に受け継がれている、農村舞台での人形浄瑠璃の楽しみ方や地域の暮らしや食文化を紹介する。同地区は数多くの農村舞台が残された地域。この舞台は人形芝居のための野外劇場で、全て神社の境内にあり、鎮守の神様に人形芝居を奉納するためにあった。今でも7カ所の神社で、春祭り・秋祭りのシーズンに人形芝居が行われている。
この人形芝居は、地域で農業や林業を営んでいる住民によって上演されてきた。そのため、舞台芸術として舞台上の価値だけでは伝えきれない良さがあると考え、人形浄瑠璃の文化を支えてきた同地区の暮らしや文化と合わせて紹介している。
同展では、製造技術が国の無形民俗文化財に選択された阿波晩茶や創業約300年の老舗蔵元が製造する地酒「旭若松」、「木頭ゆず」の加工品など、同地区の文化の発展を支えてきた物産も販売する。
最終日の15日には、農村舞台を再現した劇場で人形浄瑠璃を上演する。1907(明治40)年に発足した木沢芸能振興会と2009(平成21)年に地元の青年団が中心になって結成した丹生谷清流座の2つの人形座が公演を行う。上演時間は13時30分~15時。
佐藤憲治館長は「温暖な気候で水も豊富、土地も肥えている。そのような地域だからこそ人形浄瑠璃や阿波踊りなどの文化が栄えたという、徳島の豊かさを感じてほしい。晩茶や地酒など、今に残る良いものを買って帰って家でも楽しんでほしい。舞台の上だけでは無い徳島の人形の魅力を伝えたい」と話す。
開館時間は9時30分~17時。入館料は、一般=410円、高・大=310円、小・中=200円。